  
この度、ウェルフェアマガジンのサイトに「傭兵タカベの独り言」というコーナーをいただき、色々書かせていただく事になりました。これまでに拙著を読んでいただいた読者の方にもそうでない方にも、また自衛官の方にも一般の方にも、皆様に楽しんでいただけるように、今まで著書に書かなかったような自衛隊時代や傭兵時代の裏話や日々の徒然の出来事など、出来る限り更新していきたいと思います。
ウェルフェアマガジンともども、よろしくお願い致します。
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第 8 話
皆様、お元気でありますか?
最近は1日過ぎる毎に、はっきりと気温が下がっていくのが感じられます。
自分は最近ちょっと喉がおかしくて、風邪気味のようであります。以前は真冬でも風邪知らずでありましたが、熱帯に長くいたせいか、心なしか寒さにはちょっと弱くなったようであります。
皆様も、これから風邪やインフルエンザの季節になりますが、健康管理には十分に気をつけてくださいね!
さて、昨日の夕方のニュース番組で、あるニュースに目が止まりました。
「オレオレ詐欺、最悪のペース」
オレオレ詐欺なんて、本当に不細工で情けない連中がはびこっている事に腹立たしい思いでありますが…このニュースを聞く度に自分は他人事とは思えない、ある事件を思い出すのであります!
それは自分がボスニアにいた頃であります。
「ヘイ、タカベ。ちょっと手伝ってくれないか」
キャンプ内のコーヒーショップでコーヒーブレイクを楽しんでいた自分にそう声をかけてきたのは、傭兵部隊の先任下士官だったカナダ人傭兵でありました。
自分以外にもその場にいた数人が呼ばれて行った先、それはキャンプ内の郵便局でありました。そして我々は、彼の後をついて電話ブースに入っていったのであります。当時は携帯電話もなく、電話をかけるにはそこに行くしかなかったのでありました。
そこで彼は、我々にひとつの指示を出したのであります。
「さあ、みんなベルトを抜くんだ。俺が合図したら思い切り床に叩きつけるんだぞ。なるべく派手にな…」
一体何をやる気なのかは知らないが、相手は先任。やるしかないであります。
先任を見つめる我々。
受話器を手にとった先任。
先任の左手が徐々に上に上がる。
そしてその手が鋭く下に振り下ろされる。
「今だ!」
その合図に合わせて、我々はベルトを思い切り床に叩きつけたのであります。
コンクリートの床が「バシーーン」と大きな音をたてると、その瞬間
「アオ―――――チ」
先任が突然大声で叫び声を挙げたではありませんか!
その声に驚いて我々は手を止めそうになったのでありますが、先任は左手を激しく振って我々に床を叩き続けるように催促。
周りにいたクロアチア正規兵たちは当然「アカン…アホどもが本格的に壊れよった」なんて目で、我々を見つめていたであります。そんな視線が、痛いほどビシビシと突き刺さっているのはわかっていたであります。しかしそこは先任の命令。先任の命令は軍人には絶対であります!我々は更に激しく床を打ちつけたのでありました。
そうしながら、電話口でゴソゴソ話している先任の声に耳を傾けると…
「オー、マム。敵に捕まっちまった。今拷問を受けているんだ。釈放されるにはちょっとまとまった金が必要なんだ」
時折混じるわざとらしい絶叫を交えながら、そんな事を話していたのであります!
何かに似ていると思わないでありますか?
そう、オレオレ詐欺であります!!オレオレは本人に間違いないでありますから、厳密にはオレオレ詐欺ではないでありますが…。
それでやっと状況が掴めた我々は、笑い声を押し殺しながらも床を叩き続けたのでありました。心では悪い事をわかっていたでありました。しかし…しかし…
そう、先任の命令は軍人には絶対なのであります!
心で先任の母親にごめんなさいと詫びながら、我々は心を鬼にして床を叩き続けたのでありました。
しかし拷問受けながら電話かけたりできるのか?とか、振込先が自分名義でおかしいと思わないのか?なんて当然の疑問、この先任はおかしいとは思わなかったのでしょうかね?床を叩きながらも、そこは大いに疑問でありました。
こんなオレオレ詐欺のはしりのような手口。みなさんは成功したのと思うでありますか?大いに興味のあるところでしょう。
しかし…なんと数日後、先任の口座に本当に振り込みがあったのであります。
先任が口にした金額の10分の1以下の、ほんのお小遣い程度でありましたが…
きっと先任のお母さんは自分の息子の猿芝居を見抜いていたんでしょうね。でも優しいお母さんは、息子はそんなに困っているのかと送ってくれたのでしょう。
なんと優しいお母さん。こんな優しいお母さんを騙してはいけません。バチが当るであります!
そんな事を思っていたら…その先任、残念ながらその事件の僅か後に非業の戦死を遂げてしまったのであります!!
まさかとは思うでありますが……ここで教訓であります!!
親は大切にしましょう!
親を騙してはなりませぬ。
さもないと早死にするでありますよ。
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